何故、正確に登山道をたどることができなかったのか。積雪のせいだとすれば、無雪期に三度目の挑戦だ。
あれから10箇月近く経過していた。その日は好天に恵まれた。日没の時刻は1年で最も早い時期であり、ロスタイムは許されない。
三度目の正直なるか。それとも、二度あることは三度あるのか。
旗山までは順調だった。深い笹薮にも慣れてきた。
問題は下山だ。送電線鉄塔の巡視路に特有の階段状に整備された道を下る。その階段がなくなると踏跡が不明瞭になる。目印が少ない上に、傾斜が緩やかになってどこでも歩けるから、かえって始末が悪い。目印になるはずの鉄塔が見つからないままに西の方角へと下っていく。常緑樹の多い山なので視界が閉ざされて鉄塔に気付かなかったのだろうか。行きつ戻りつしているうちに踏跡が現われ、鉄塔も見つかった。やれやれ・・・。
前半で時間を稼いだこともあって、明るいうちに下山できた。
このあたりの山には魔物が潜んでいる。起点となる柘植の駅から見ると北東の方角だ。鬼門ならば避けた方がよさそうだ。その前にもう一度だけ挑戦する機会を設けたかった。
年が明けて2000年1月、四度目の挑戦で初めて迷うことなく麓から旗山まで登ることができた。
何故、毎回のように迷うのか。
登山者が少なく踏跡が薄いこと。
目印、標識ともに少ないこと。
倒木が多いこと。
手掛かりとなる送電線と鉄塔が視界に入りづらいこと。
これら複数の要因が重なり、標高の低いわりに初心者には手ごわい山となっている。
その後、この山域からは20年間足が遠のくこととなる。