行方知らずのさすらい暮らし

自称「さすらい人」が書き綴る気ままな日々の暮らし

読書感想 その13

渡辺淳一「阿寒に果つ」中央公論社

 

つい先日読み終えた「挽歌」の余韻が冷めやらぬまま、引き続き舞台が北海道の小説を選ぶ。

奥付を見ると昭和48年11月30日(初版)であり、約半世紀ぶりの再読になる。

 

 

主人公の高校生は「魔性の女」そのものだ。

男性側の視点に立つこの言葉を安易に用いるのは控えたいが、昭和20年代という時代を考慮すると驚くほかない。

 

第1章の主役である高校生の男の子は、若い頃の自分を見る思いで、いささか気恥ずかしくなる。

第2章以下は謎解きゲームのような面白さがある。

眼が疲れて頁を閉じても、しばらく時間を置くとその続きが気になって読まずにいられない。

 

老境に差し掛かった今だから冷めた眼で読み進むことができるが、最初に読んだ時はすっかりのめり込んでしまった。まだ免疫ができておらず、危うさのある多感な年頃だった。

 

この種の小説ばかり読みふけるより、様々な実体験を通じて学習すべきだった。時すでに遅し。