( 承前 )
山小屋にて
蓼科山頂ヒュッテでは、日の出・日の入りの時刻が表示され、食事の時間はこれらの時刻と重ならないよう配慮されている。その心遣いがうれしい。
1階の共有スペースには、豪華な音響装置とともにピアノが置いてある。調律されておりいい音色がする。小屋番の男性が夕食時にバッハの曲を披露してくれた。その後では弾きづらい。
まわりに人のいない時を見計らい、遠慮がちに弾かせてもらった。食事時に聴いてもらうにはまだ練習不足だ。
夕食が済むと、宿泊者が三々五々外へ出ていく。山頂を取り囲む山並みや刻々と変化する夕暮れの空を眺めていると、消灯時刻(8時)の早いのが恨めしくなる。
蓼科山の影が映る。
北アルプスの稜線
山小屋の朝は早い。
夜中に立ち込めていた霧が晴れた。4時前から小屋の前で御来光を待つ。
待ち時間の長いのに反して、顔をのぞかせた朝日は見る見るうちに昇っていく。
気温は12度、このさわやかな冷気をそっくり下界へ送り届けたい。
雲海
入浴と飲み水の確保ができれば、長期間滞在したくなる居心地の良い山小屋だった。
今なら感染対策で大部屋が個室のように仕切られている。
このような山小屋があれば、避暑地に別荘を持たなくてもいい。
( 続く )