行方知らずのさすらい暮らし

自称「さすらい人」が書き綴る気ままな日々の暮らし

読書感想 その12

感想を述べたくなった読書は久しぶりだ。

 

原田康子「挽歌」新潮文庫

 

初版は昭和31年、舞台は北海道の釧路である(但し、本文に釧路の地名は出てこない)。

映画化され、TVドラマにもなった。

街のざわめき、季節の移ろい、氷点下の大気のほか、喫茶店のコーヒーの香り、煙草の匂いまでが行間から伝わってくる。

無性に釧路へ行きたくなった。街をさまよい歩き、時間が許せばその背後に広がる釧路湿原も。昭和30年当時の面影を追い求めてみたい。

 

釧路は過去に2度訪れたことがある。「挽歌」を最初に読んだ時から日が浅かったが、ただの通りすがりの旅人に終わってしまったことが、今となっては惜しまれる。

 

この作品は、今風に言えばW不倫の物語であり、主人公たちに共感の余地はない。

あの時代にあれだけ自由奔放に行動することのできた女性が、東京から遠く離れた地方都市に存在したのであれば、私の認識不足だった。

(釧路 昭和49年9月撮影)