大正生まれの直木賞作家で世代の差を感じそうだが、不思議なことにこの人の随筆には違和感がみじんもない。むしろ共感を覚えることが多い。例えば・・・
「競馬で勝つと、私はすぐその金を品物に変えてしまう。だから、私の家には有馬記念のゾーリンゲンの鋏とか、目黒記念のハンドバッグなどがある」(「ポケットの穴」 1966年 新潮社)
文章がとても読みやすい。余韻を残す結末に特徴がある。
新潮社から、男性自身のシリーズが多数出版されていたが、絶版になっているのが惜しい。図書館や古本の通信販売が頼りだ。
酒とたばこで寿命を縮めたのではないかと推察する。もっと長生きして楽しませてほしかった。