「ありがとう・さようなら」
ラヂオから流れてきた。卒業式にふさわしい合唱曲だと思う。
「思い出の傷が残るあの机に だれが今度はすわるんだろう」
不意打ちを食らったような思いだ。瞬時に数十年前へと時が引き戻された。
自分のような凡人にはおよそ考えもつかぬ歌詞である。
先日、TVのローカルニュースで公立高校の入学試験の光景を見たら、何と我が母校だった。
教室の簡素な机と椅子は、当時とほとんど変わっていなかった。
超難問だった数学や物理の試験、ひたすら居眠りを続けた授業、隣りの席の笑顔が素敵なセーラー服の子、母が持たせてくれた昼の弁当 ・・・
苦楽を共にした机と椅子からは、そんな思い出がよみがえる。
卒業以来会っていない同級生が多い。
音信不通のためクラス会の開催が不可能となって久しい。もう会う機会は二度と訪れないだろう。
出会いと別れ。両者の間の不等号( < > )の向きが、或る時期を境に逆転する。
それでも人生の卒業までの間、新たな出会いがきっとあるに違いない。